電子契約の導入に注意すべき法律とは

電子契約の導入に注意すべき法律とは

お役立ち情報2021.03.12

目次


リモートワークの促進に合わせて、ますます注目されている契約書の電子化。政府もガイドラインの発信や押印廃止に向けた検討を始めるなか、「電子契約」は近い未来に企業の必須課題となってくるでしょう。ここでは、「電子契約」に関連する法律について解説していきます。




参照 内閣府「押印手続きの見直し・電子署名の活用促進について」


電子契約とは


契約は当事者同士の意思の合致のもと成立します。契約を交わすだけであれば、口頭であっても成立するのです。しかし、万が一のトラブルが起きた場合、合意内容を証拠として残すために書面で契約書を交わすことで法的有効性を担保しています。


「電子契約」とは、従来、書面で交わしていた契約の締結に伴う文書作成を、インターネット上で「電子データ」として作成する契約方法です。


2種類の電子契約タイプ


電子契約においては、改ざんされていないことを示すタイムスタンプに加えて、本人が作成したことを証拠として示す必要があります。この「本人性」を担保する方法の違いにより、電子署名は2つの種類に分類されます。


「電子サインタイプ」(立会人型)


電子サインとは、メールを始めとした認証とシステムログを利用して本人であることを担保する仕組みです。契約サービスに登録し、メールアドレスさえ持っていれば利用することができます。導入しやすいタイプと言えます。


「電子署名タイプ」(当事者型)


一方の電子署名は、署名証明書を利用して本人であることを担保する仕組みです。第三者機関の電子証明局が厳格な審査を行い、電子証明書を発行してくれます。この電子証明書を活用することで、電子署名法に準拠した法的効力の高い本人認証が可能となります。


▼契約タイプについて詳しく知りたい場合は、こちらの記事もおすすめです。
【電子契約・電子署名】立会人型と当事者型の違いとは


電子契約に重要な4つの法律


電子帳簿保存法(1998年7月施行)


電子帳簿保存法(正式名称「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」)とは、請求書や発注書、仕訳帳などの書類について、全部又は一部の電子データによる保存を認めた法律です。これまでは、紙での最低7年間の保存を義務付けられていた記録書類が、事実性や可視化の確保などの一定の保存条件を満たせば、帳簿書類を「電子データ」として保存することができます。


電子契約を導入する際には、電子帳簿保存法に対応したシステムであるか確認することも重要になるでしょう。


参照 国税庁「電子帳簿保存法関係」


電子署名法(2001年4月施行)


電子署名法(正式名称「電子署名及び認証業務に関する法律」)とは、電子署名が署名や押印と同等の法的効力を持つと認めることを定めた法律です。


電子契約においても、契約について争いが生じた場合には、裁判上の証拠となることが必要となります。


民事訴訟において、文書に証拠力が認められるためには、署名者が本人の意思で作成した文書であること(文書の真正性)を立証する必要があります。(民事訴訟法第228条第1項)


参照 法務省「電子署名法の概要と認定制度について」


IT書面一括法(2001年4月施行)


IT書面一括法(正式名称「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」)とは、顧客保護の観点から事業者に書面の交付や書面による手続きを義務付けている法律について、顧客などの承諾を条件に、書面に代えて電子メールなどの情報通信技術を利用する方法で提供することができることを定めた法律です。


参照 衆議院「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」


e文書法(2005年4月施行)


文書法とは、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」の総称です。


財務・税務関係の帳票類や取締役会議事録など、商法(及びその関連法令)や税法で保管が義務付けられている文書について紙文書だけでなく電子化された文書ファイルでの保存が認めた法律です。


電子契約ができない文書もある


契約方式自由化の原則により、基本契約・秘密保持契約・売買契約・業務委託契約・請負契約・雇用契約などほとんどの契約で「電子契約」の利用が進んでいますが、消費者保護や紛争防止の観点から書面作成が契約の成立条件になっている場合や書面交付を義務付けられている場合があり、こうした場合には注意が必要です。


書面が必要な文書の一例


  • ・定期借地権設定契約(借地借家法第22条)
  • ・定期建物賃貸貸借契約(借地借家法第38条)
  • ・割賦販売法に定める指定商品についての月賦販売契約(割賦販売法第37条等)
  • ・宅地建物の販売・交換・賃貸契約の成立時交付書面(宅地建物取引業法第73条)
  • ・労働者派遣の個別契約(人材派遣法26条1項、人材派遣法施行規則21条3項)


相手方の同意や希望が必要な文書の一例


  • ・労働条件通知書(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条4項)
  • ・派遣労働者への就業条件を明示する書面(人材派遣法34条、派遣法施行規則26条1項2号)
  • ・下請会社に対する受発注書面(下請法3条2項)


まとめ


電子契約を導入する場合は、電子化できる文書と電子化できない文書がどれくらいあるかを把握し、メリットが得られるか確かめることが大切ではないだろうか。また、関連する法令をしっかり理解しながら、自社にマッチするサービスを導入していただきたい。


参考 電子印鑑なら『GMOサイン』契約印相当と実印相当を使い分け