マーケティングオートメーションの失敗あるある「マーケティング部門が提供する有望案件を営業がフォローしない」

マーケティングオートメーションの失敗あるある「マーケティング部門が提供する有望案件を営業がフォローしない」

Webマーケティング2021.03.31

目次


「マーケティングオートメーション元年」と言われた2014年から月日が経ち、マーケテイングオートメーション(MA)というキーワードも当たり前のように使われるようになりましたね。


以前は、マーケティングオートメーションツールというと、関東の大手企業を中心にアーリーアダプター層で導入が進んだように筆者は感じていますが、今年は、中小規模や関西圏の企業でも導入が進むことが見込まれます。


また、電通西日本が外資のマーケティングオートメーションツールの販売及び導入支援を開始したことを公表しましたので、このニュースからも、その市場の広がりを予感させます。


しかし、明るい話ばかりではないことも事実です。先んじてマーケティングオートメーションツールを導入し、成功している企業様の事例が際立って紹介されますが、その影には数々の失敗例も出てきています。


今回は、その失敗例を一つご紹介したいと思います。


これからマーケティングオートメーションに取り組みたい企業様や、すでに取組中の企業様、また、マーケティングオートメーション関連でビジネスを展開したい方々にとって、マーケティングオートメーションツール導入を成功に導くヒントになれば幸いです。


新規顧客獲得に課題を抱えていたA社の例


A社は法人向けに工場内で利用する1台数千万円ほどの機械を販売するメーカーです。営業部では一人一人がいくつかのクライアントを担当しており、定期的にクライアントにお伺いし、追加の発注や、メンテナンス案件などを獲得していました。その中で課題となっていたのは「新規案件開拓」でした。


これまで新規の案件開拓というと、既存クライアントの別部署・別事業所やグループ会社、その他取引先のご紹介への営業活動が主で、展示会には年に2回出ており、その来場者にフォローをしていました。


紹介からは受注率が良いのですが、これはいつ来るかわからないので不安定。できれば展示会から安定的に受注ができるのが理想なのですが、その展示会からの受注がさっぱり無かったのです。1回300~500万円程度かけて出展しているにもかかわらず、年内受注はほぼなし。展示会を任されている営業企画部の部長B氏は、「費用対効果が悪いこと」を責められていました。


そこでB氏が思い出したのが、以前に参加したカンファレンスのことでした。そこでは、マーケティングオートメーションの成功事例として、展示会やイベントで獲得した名刺を中長期で育成し、有望なタイミングで営業に渡すことで、受注が増えた例が紹介されていたのです。


B氏は藁にもすがる思いでマーケティングオートメーションツールのベンダーに声をかけてみました。


展示会名刺からの受注率が上がることを期待したB氏


B氏は経営幹部から結果を求められていました。後がないと考え、あるマーケティングオートメーションツールを導入することを決めます。マーケティングオートメーションツールのベンダーの話を聞く限り、展示会の来場者は中長期で追いかけ続ける必要があるものの、それをすべて手動で行うのは無理があり、自動化し、適切なタイミングで営業がアプローチすることが重要だということがわかりました。


この話から、これまで成果が出ていなかった展示会で獲得する名刺が、今後はお宝に変わるのではないかと期待したのです。そして、次回展示会後のフォローから活用することを決めました。


マーケティングオートメーション導入後にわかったこと......


B氏がまず思い知ったのは、想像以上に工数がかかることでした。また、ツールの使い方を問い合わせたところ、サポートやコンサルティングは別料金と言われ、当初の予算よりも費用がかかってしまいました。


それでも以前と比べると、展示会来場者リストが誰かの引き出しに眠ることはなくなり、定期的に、有望な案件として営業部に提供できるようになりました。


しかし、最も予想外だったことは、せっかく提供した有望案件リストを営業がフォローしてくれないということでした。導入から1年が経ち、すでに2回の展示会を経験しています。それでも社内で納得してもらえる成果(受注)が出ていない理由が、まさにこの「営業がフォローしてくれない」という点でした。


営業が有望案件をフォローしない理由


いくつかの理由がありますが、最も大きかったのは、「営業現場でその展示会リストのフォローの優先順位が上がらない」ということでした。営業からは「既存クライアントのフォローで忙しい」「すぐに受注が決まらないのであれば、既存クライントをフォローしたほうが効率的」などと意見が上がり、B氏は困ってしまいました。一体どうすれば営業が新規案件をフォローしてくれるんだろうか......と。


この失敗例のポイント


・新規案件獲得の優先順位の高さが営業に伝わっていない


・新規獲得専任者がいない


この2つが大きな失敗ポイントだったのではないかと思います。


もし、自分の担当しているクライアントに定期的に訪問するだけで、自分の持っている目標が達成できてしまうのであれば、わざわざ慣れない新規クライアントに行く優先順位は上がらないですよね。また、現状ですでに業務量が多いのであれば、新たなことに手を出せる余裕はないので、たとえ、物理的には電話一本かけるだけだとしても、心の余裕がうまれにくく、新規のフォローはなおざりになってしまうでしょう。


マーケティングオートメーションツール導入を成功へ近づけるために何をすべきだったか


必ずしもこれだけが正解ではないですが、前述の失敗例を踏まえると以下の2つがポイントになるはずです。


・営業の責任者や役員を巻き込み、新規案件獲得の優先順位が高くなるよう、協力してもらう


・新規案件専属の営業担当を配置し、目標をもたせる。


最後に


今回は、「人」をどう動かすか、組織の壁が中心となっていましたので、その企業の状況によっても、正しい解決策は異なります。話をわかりやすくするため、細かな設定を省いていますが、より詳しくヒアリングしていくと、もっと課題は山積みな可能性があります。


しかし、今回お伝えしたかったことは、マーケティングオートメーションツールの導入は、それが完了すればすべての課題が解決するわけではないということです。


マーケティングオートメーションツールはあくまで案件創出の手段にすぎず、有望案件として創出された案件をクロージングしてくれる方がいてこそ、それが「受注」という成果に結びつくのです。


マーケティングオートメーション導入後の成功は、組織の壁に阻まれ頓挫することは山のようにあります。これからツールの導入を考えられている方、導入のコンサルティングをされる方に少しでもヒントになりましたら幸いです。