2019年から順次施行され始めた「働き方改革」により、それ以前と比較して極力残業時間を減らすよう、様々な取り組みを行う企業が増えてきました。しかし、諸外国と比べて日本はまだ一人あたりの残業時間が多いという現状があります。

現在の日本では、高齢化社会による労働力の減少により、長年重要視されていた「雇用の保護」よりも、経済の需要に対し労働力の供給、すなわち「人手不足」が課題となっています。

長時間働いて生産量を積み重ねることでビジネスがうまく回った時代は終わり、いかに革新的な商品やサービスを生み出せるかで事業の成功が左右される時代になりました。この時代の変化に伴い、働き方やビジネスの在り方も臨機応変に変えていかなければ日本の経済は停滞していく一方でしょう。

ここでは、OECD(経済協力開発機構)のデータを元に諸外国と比べたときの日本人の労働事情や、なぜ日本に残業の習慣が根付いてしまったのか、残業がもたらすデメリットをお話していきます。

諸外国と比べた日本の労働時間

OECDのデータ(2019年)によると、日本の総労働時間は先進国の37ヵ国中22位でした。

参照:OECD Data Hours Worked

37ヵ国中の22位ということは、それほど働きすぎではないのでは?と思われるかもしれません。しかし、これにはパートタイム労働者や自営業者などの全ての労働形態が含まれているのです。そして、日本におけるパートタイム労働者は年々と増加しており世界的に見ても上位に位置しています。

参照:OECD Data Part-time employment rate

つまり、総労働者からパートタイム労働者の数を除きフルタイム労働者のみで統計を取った場合、日本の総労働時間数は急激に上位へと上がることがわかります。

日本に残業習慣が根付いた背景

では、なぜ日本においてフルタイム労働者の長時間労働はこれほどまでに根付いたのでしょうか。これには戦後の経済成長期の働き方が関わってきます。

労働力が豊富だった

大量生産・大量消費の製造業中心だった成長期のビジネスモデルは、費やした生産時間と生産量が比例しやすい構造でした。経済成長期には、農村から都市へ働きに出る人々(低賃金の豊富な労働力)が価値創造の源だったため、その豊富な労働力に、できるだけ長時間・長期的に働いてもらうことが効率的でした。

これが後の年功序列制度にもつながっていきます。そしてこの構造は、「男が稼ぎ、女性が家庭に入る」という、社会通念を広く浸透させていきました。

長時間労働により雇用保護を確約していた

急成長期において、長時間労働には雇用保護のメリットがありました。経済成長に合わせて事業が拡大していくにつれて、「働く人の数」ではなく「働く時間」の調整で必要な業務量に対応していました。これによって、従業員を解雇・新規採用することなく、同一人材を雇い続けることができました。この残業習慣は、新卒一括採用を促進するだけでなく、国際的にみても低い失業率をもたらしてきました。

このような日本の雇用の在り方が「雇用保護」の観点から国際的に評価されたことにより、残業習慣は当たり前のように根付き始めました。

残業こそが組織貢献の証という社会風潮

従業員側も、終身雇用・定期昇給の安定と引き換えに長時間労働を受け入れてきました。異動・転勤を伴う不確実な職務範囲の中でも、職務を無制限に拡大し、所定時間を超えて働くことが組織貢献であるという社会通念が出来上がりました。

その中で残業手当のでないサービス残業という慣習も深く根付き、安定雇用と引き換えに協調的な労使関係が築かれていきました。

残業がもたらすデメリット

日本に残業習慣が根付いた背景についてお話してきましたが、冒頭でも記述した通り、現在の日本では高齢化社会による労働力の減少により、長年重要視されていた「雇用の保護」よりも、経済の需要に対する「人手不足」が課題となっています。経済成長期のような豊富な労働力はもはやあてにならない時代です。

今でこそ政府が働き方改革を掲げ、多くの企業もそれを意識した取り組みを始めていますが、未だにフルタイム労働者の残業習慣は根付いています。しかし、今の時代における長時間残業はデメリットでしかありません。そのデメリットと影響についてお話していきます。

健康が損なわれる

残業をすることによりて、本来なら自由に過ごせるはずのプライベートの時間や睡眠時間が削られます。これによりストレスがたまり、心身ともに健康が損なわれる恐れがあります。健康が損なわれてしまっては、仕事もままなりません。

まずは健康第一で無理な残業は行わないようにしましょう。

生産性の低下

睡眠時間が削られることによって、集中力が低下し、仕事の生産性の低下へとつながります。業務スピードが落ちることによって、再び残業せざるを得ない状況に陥り、人件費ばかりかかってしまいます。また、集中力とやる気の低下によってパフォーマンスも落ち、売上低下につながる可能性もあるでしょう。

人件費がかかる

企業にとっては残業をする従業員が多ければ多いほど人件費が跳ね上がります。また、あまりにも残業が多い企業の場合、従業員の定着率も低く採用の手間がかかってしまいます。

残業時間を減らすには

上記で記述してきたように、残業することは従業員にとっても企業にとっても多くのデメリットがあります。しかし、提出期限や納期が差し迫っている状況下や、極力早く終わらせる必要がある案件を抱える場合など、やむを得ず残業をしなければならないタイミングもあるでしょう。

戦後の経済成長期から長らく残業習慣が根付いてきた日本で、いきなり残業をゼロにすることは容易ではないでしょう。どうしても残業しなければならない日があるのであれば、定時退社日や時短で働く日を別途設けるなど、できる限り柔軟に対応できる働き方が理想です。

残業時間を把握する

まずは、自分がどの程度残業をしているのかを把握することが大切です。そしてその残業時間は本当に必要だったのかを考えてみましょう。

「就業時間内に仕事が終わらなかったとしても、残業すれば大丈夫」という思考が定着してしまうと、仕事の生産性は下がっていく一方です。どうすれば効率よく業務を進めることができるかを常に考え仕事に取り組みましょう。

残業時間を調整する

企業の人事担当者は常に、誰がどの程度の残業をしているかを把握しておく必要があります。また、残業をしすぎている従業員に対し注意喚起したりシフトの調整をする必要があります。

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まとめ

本記事では、世界的に見た日本の労働時間数を始め、残業習慣が根付いた背景や残業によるデメリットやその解決のヒントをお話してきました。

必ずしも残業することが悪いということではありませんが、仕事はなるべく早く終わらせプライベート時間もしっかりと確保しワークライフバランスの実現を目指した働き方を心がけましょう。